沖縄で自邸を建てることは、他者性を乗り越え当事者としてこの土地の政治的地域性と向き合う拠点となります。最初の手がかりとして、沖縄戦後に雨風を凌ぐために建てられたバラックなどの簡易的な建物を参考にして構築しました。壁の表裏を逆にすることによって、外在を内在に取り込み、消えることのない記憶が家の内部にまで包括されます。すべての当事者にはなれないが、仮設でも自邸を置き、他者を想像することが共存することにつながるのではないか。
展示について
町田恵美(エヂュケーター)
実像|虚像
目の前に存在する事物こそが彫刻だとしたら、
はたしてそれは本当に存在しているのだろうか。
壁は隔てられた「こちら」と「あちら」をつなぐ表裏一体の存在として機能する。
区切られた壁によって囲まれた空間を自らの場所とするが
仮設は一時的であるがゆえに、脆く、不安定である。
仮設を自邸とすることは、
異郷の地での喪失感と所在なさを抱えながら存在を確かめ続ける行為といえる。
自己と他者の間で交わされる関係性への幾つもの問い、
その反復のただなかに身を置くことは生易しいものではない。
だが、それもひとつの選択として土地に留まることで見えてくる景色がある
はりめぐらされた目に見えない壁に囚われるより、
たとえぶつかっても起き上がれる余剰を構築する手掛かりとして
実存する仮設をつくる、それは身を置く者からの場に対する応答ではないか。