沖縄県には日本最大、青森県には本土最大の在日米軍基地がある。社会的・地理的に中心から距離のある二つの土地の共通項を探ろうと考え、米軍基地を有する三沢市でのリサーチから始めた。
足繁く通い地元の人々に話を聞く中で、その土地の特性は基地の存在だけでは捉えきれないことに気づいた。その後、六ケ所村をはじめとする青森県上十三地域へと範囲を広げ、文献や地図による調査、現地取材を通して、地域の現状や人々の日常に向き合った。
リサーチと並行して、首都圏で暮らす東北出身者に居住空間の写真を提供してもらい、それらを手に青森県内のリサイクルショップを巡り、写真に写る日用品を集めた。リサイクルショップには、その土地の生活条件に根差した品々が並び、何が必要とされ、何が手放されてきたのかが表れている。私にとってこの行為は、単なる物集めではなく、暮らしの輪郭に触れる試みでもあった。
また、集めた日用品を使い、提供された写真をもとに居住空間を再構築したセットを組み、撮影した仮の空間を壁紙に印刷した。個人に属する固有の空間を出発点にしながら、段階的に個人性を剥がし、匿名性を帯びた日常風景へと変容させていく。壁紙という私的空間を覆う素材の持つ貼り換え可能な性質を通して、日常が固定されず、外的要因によって容易に書き換えられ得ることを示唆している。
展覧会では、壁や屋根を持たない不安定なフレームにイメージを据え置き、日常を支える基盤の脆弱さを想像させる。また、リサーチの過程を写した写真を展示し、それは私自身の日常の記録であると同時に、その土地に触れ続けた時間の堆積を示すものとなった。
さらに、居住空間のセットは、本会場とは異なるサテライト会場へ移動して展示した。日常は身近であるがゆえに、客観的に捉えにくい。確かなものと思われがちな日常が、他者や環境との関係の中で仮設的に成り立っていること、そして遠く離れていても交差可能なものとして可視化することを試みた。

「背-景、支えるもの」2025年 木材、壁紙にプリント 撮影:前谷開



再現のもとになった写真、現在首都圏に住む青森県と岩手県の出身者に提供してもらった


リサイクルショップを巡っているときに撮影した写真
オフサイト会場での展示
オフサイトでの作品展示 2025年11月16日、23日
旧ユースタイル 3F(青森市内)
展覧会会場から徒歩10分の場所でセットの作品公開。2会場を往来する形式での展示となった。




聞き取りのリサーチ

左から
・「ぬ~どるハウス丸美屋」米軍関係者にも親しまれているお店。初代の方(92歳)に朝鮮戦争時の三沢市の活気について話を聞いた。
・三沢市に住む一戸さんの昭和に建てられた元居宅を地域の子どもたちのために保存している「おらどの家」保管されている昭和初期の小道具や衣類は100点を超える。
・CROSS ROAD三沢が開催しているのナイトツアーに参加。真ん中の縁石を境に左が三沢基地の敷地、右のタイル側が日本